今日の目的地は上野と浅草。
何でココを選んだのかと言うと、事前に「年末だから人が一杯いるよー。行ったら気持ち悪くなるからやめときなよ」と言われていたからだ。

行くなと言われれば行ってみたくなる。
これが人間の深層心理だろうか?(違う気が大いにする)

取り合えず一旦東京駅に出て荷物を預けて…と思っていた私は、自分がいかに甘いかを思い知らされた。
…コインロッカーが無い!
正確に言うと空いたコインロッカーが無い。
しかもロッカーの付近でウロウロと待ってる人が沢山居るし。

思いつく限りのロッカー設置場所に行ってみたが結果は同じ。
無い、無い、無い。
挙句の果てには有人荷物預かり所があったはずの所まで行ってみたが、そこもコンビニ?になっていた。
(八重洲口にあった筈だが、どこかに移動したのだろうか?)

上野にも浅草にも行かない内に歩き疲れてしまった私は、情けなくなって人ごみの中で重い荷物を抱えて途方に暮れてしまった。
んでボケ―っと考えていたら、ふとある事が思い浮かぶ。


「何もそこまで必死になって東京駅で預けることは無いのではないか」


そうだ、このまま上野に行こう。
そう思った私は重い荷物を下げて切符を買い、山手線に乗った。
乗ったものの車内アナウンスがよく聞き取れない。
間違えて秋葉原で降りそうになったが、何とか上野で下車する。

…上野駅って大きいんですね。
やっとロッカーを見つけたものの、その場所に再びたどり着けるかどうか不安になってしまった私は、必死に出口までの道を覚えた。

以前東京駅で預けたロッカーの場所を見失い、発車5分前まで半泣きになって探した経験があるからである。

向かった出口は「不忍口」。
もうお分かりだと思うが、私はアメ横に行きたかったのである。
よくテレビで見る年末のアメ横。
オバちゃんたちが目の色を変えて買物をしているアメ横。
せっかく年末に東京に来てココへ行かない手は無いと思ったのだ。

駅は出たが、またもや道が分からない。
しようがないので、人の流れや持ち物(アメ横へ行った人なら生鮮品を入れたビニール袋を持っている筈だと思った)をよく見て流れについていった。

人ごみで頭一つ抜き出ている人が立っている。
おおっ!と思ったら、アメ横の入口に居るお巡りさんだった。
うーん、こういう風景もテレビで見たなあ。
初めて来る場所なのに、懐かしいね。

狭い路地に人が流れ込んでくる。
キツイ、苦しい、息が出来ん。
一方通行ではないから人の流れもぶつかりまくる。
一時はそこかしこで悲鳴に近い声が上がった。
東京の人って、こんな思いまでしてお正月の品物を揃えに来るのか。

流れに身を任せて歩いていたら、一瞬完全に身動きが取れなくなった。
誰かが「足が浮いてるー!!」と叫ぶ。
圧死するかも、と思ったが厚着が幸いしたのか事故は起こらなかった。
冬はダウンのジャケットやオーバーを着ているので大丈夫なのだろう。

店を見ていくと、数の多さの割に売っている物は殆ど同じ。
カニ、数の子、鮭、タコ。
今年はカニが不漁だと聞いたが、どの店も足しか売っていなかった。
本当にタラバガニなのだろうか。

タラバガニとそっくりの姿形をした「アブラガニ」というカニが居るのだが、これでは見分けがつかないだろう。
甲羅の突起の数でしか見分けられないと聞いているのに。

入口の方にあった店ではカマボコも叩き売られていた。
色々入って1000円。
安いな、と思ったら奥の店で500円の値札が付いている。
これが自由市場かあ、などと感心しながら歩いていく。

食べ物を売っている店の隣りで、突然衣服を売っていたりする。
チョコレートやおつまみを投げ売りしていたりもする。
突如、薬屋さんが出現したりもする。
どうやら店の並びに何の脈絡も無いらしかった。

何か買って帰りたかったが、ナマモノは持って帰れない。
決して安い訳ではないが、東京人にとっては一種の風物詩なのだろう。
ひょっとしなくても、東京人の遺伝子にはこの風景が恋しくなるDNAが存在するのかもしれない。
アメ横に大満足した私は、その足で浅草に向かったのだった。
 
 
 

…次回でやっと終われるかな?(笑)この連載。

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