浅草を後にした私。
手には人形焼の袋をぶら提げて。
地下鉄に乗りながら私は気が重かった。
再びあの重い荷物を担いで家まで帰らねばならないという事実が待っているからである。
上野駅に戻ってきた私は、ロッカーまでの道順を思い出そうとした。が、
…分からん。
確か北へ行く列車案内がロッカー近くにあったような、という記憶から東北地方へ行く列車案内の標識をたどり始める。
歩きつづけるうち、段々と山手線のホームから離れていく。
そして「大丈夫かな」と不安に思った頃、ようやくロッカーを見つけた。
荷物を出して東京駅に向かう。
帰途は羽田から飛行機を使うのだが、一度リムジンバスというものに乗ってみたかったのだ。
で、東京駅に着いて空港行きのバス乗り場を探す。
探す、探す…見当たらない…。
八重洲口のバス乗り場は帰省ラッシュで大混雑していた。
人をかいくぐりながらバス停の表示を一つ一つ確かめる。
…やっぱり無いよう。泣きそうになった。
こういう時は一人ぼっちがこたえる。
バス切符売場に行くと人員整理をしているバス会社の方を見つけた。
ラッキー!と思ったが、他のお客さんの質問に答えている。
それが終わると、間髪入れず次のお客さん。
話し掛けようとしても隙が無い。自分の鈍さを呪った。
やっと体が空いたみたいなので聞いてみる。
「…あの、羽田空港行きのバスはどこでしょうか?」
「道を渡って反対側のヤンマーのビル前から発車になります」
あれだけ苦労した質疑応答はモノの10秒ほどで終了〜。
ははは。何とアッサリしたモンだったか。
発車時刻をまず確かめようとバス停に行く。
時刻表を見てから何か東京駅で食べようと思っていたのだが、発車まで5分しかないことが分かりそのまま車中の人となってしまった。
走っていると東京の街並みが通り過ぎていく。
東京っていう街は色んな顔があって、しかもその顔々の個性が強すぎる気がする。
強いて言えば、たくさん顔がある仏像みたいなものかな?
それぞれの向きによって全く違う顔。優しい顔も、キツイ顔も。
途中、レインボーブリッジを通った。
嬉しい!予定外の道順。(単に私が東京の地理を分かっていないだけ)
遠くに有明(ビッグサイト)が美しい。
またここへ来たいなあと思いつつ、羽田空港へ向かった私であった。
一歩足を踏み入れると、ビビッた>羽田空港。
人がウジャウジャとたむろしている。
椅子は一杯、人が溢れて通路や床に座り込む。
東京駅も凄かったが、羽田のそれは限界を越えているような気すらする。
ここで何か事が起こったら、パニックになるだけでは済まないだろう。
だが建物が案外単純な構造なので、それだけが救いなのかも。
一つだけ空いた椅子を見つけて座る。
実は午後6時の飛行機なのだが、空港に着いたのは午後3時。
早すぎたためなのか疲れが出たのか、そのうち眠ってしまった。
次に起きたらば午後4時。
荷物を預けてお土産を買おうと思っていたことを思い出して慌てて動く。
以前、荷物は全部機内へ持ち込んでいたのだが、チェックがうるさいので(金属のモノサシ等もカバン開けてチェックされるし)エイヤ!と全部預けることにした。
機械でチェックインして荷物を預ける場所に行こうとしたら、クネった大行列に行く手を阻まれる。
てっきり搭乗口へ向かう人の列かと思ったら、何と荷物預かりの列。
おうおう! 皆さん、こんな所からもう行列ですかい!?
並ぶ事10分。ようやく自分の番。
ボストンバックを機械に通し、カウンターに持って行く。
するとカウンターの人が私のカバンを指差して何事か言い出した。
ヤバイ物は入ってないんだけど…(笑)と思ったら「鞄の外ポケットの本が折れてしまいますよ」と言っているのだった。
ありがとう、カウンターのお兄さん。
荷物を預けると急激にお腹が空いてきたので食料を確保する。
…しかし、レストランはどこへ行っても超満員。
しようがないので1階にコンビニがあったことを思い出し、買出しに行く。
買ったはいいが、人だらけで食べる場所が無い。
考えて到着ロビーのリムジンバスの切符売場の前に椅子があったことを思い出し(我ながらよく思い出せるなあと思う)行ってみると案の定ガラガラ。
ラッキー♪ カウンターの人と目が合ったが食っちゃえ。
土産売場で友達への土産と自分の好物のレーズンケーキを買う。
好きなんです、上野風月堂のレーズンケーキ。(^^;)
それと、羽田空港でお土産を買うと店員さんが「行ってらっしゃい!」と送り出してくれるのだ。
それが結構好きだったりする。
しかし空港限定のお菓子って多いなあ。プリンにケーキ…。
「限定」という文字に弱い人多いんだな。
かくいう私もその口だったりするのだが、あまりの人の多さに挫折した。
いよいよ手荷物チェック。
実を言うと私は金属チェックに一度だけ引っ掛かった事がある。
東京タワーへ登った時に頂いた記念のカンバッチ。
鳴ってポケットを調べた時にこれが出てきて超恥ずかしかった。
乗った飛行機は通路を挟んで左右3列ずつの初めて乗るタイプ。
真ん中の人は居たたまれないだろうなあ…と思いながら、私は自列の真ん中の人を待っていた。(通路側の席だったので)
…来た。おじさん。
出張の帰りらしく、荷物もコンパクト。
彼を通すために席を立ったら、恐縮して隣りの席に納まった。
機内誌を読み出したその人は、何かを思いついたらしく、手帳を取り出してもの凄い勢いで書き始めた。
何を書いているのかは分からなかったが、そんなに凄い事が載っていたのかなあ?あの機内誌は。
ふぐの話しか私の記憶には残っていないのだけれど(笑)
ただ漠然と読み流していたのでは、この厳しいご時世に生き残れないのかもしれない。
些細な事でも仕事のアンテナを張って。
…そんな肩肘張って生きていたいとは思わんのだけどな。
離陸してしばらくすると機長から機内アナウンスがあった。
「当機はこの先、揺れる事が予想されます…。(なるべく揺れないように)努力は致しますのでご安心下さい。では良いお年を」
要約すると↑だそうである。
「揺れる」と言っておいて「良いお年を」も何も無いじゃろ!?(笑)
ひええっと私は思ったが、機長の努力の賜物か殆ど揺れは無かった。
関係ないが、私は機内飲物サービスは何杯お代わりしてもいいのだという事を今回初めて知った。
隣りのおじさんが何杯もお代わりしたからである。
喉が渇いてたのか、烏龍茶を何杯も。
オヤジ、良い飲みっぷりだ。
高松空港に到着すると、到着ロビーに行って荷物を探す。
ロビーのガラス扉の向こうでは出迎えの人が人垣を作っていた。
悲しいかな、ここにも私の知ってる顔は無い。
私は、自分が好きでやっている事では親の手を煩わせるような事はすまいと決めている。
だから、学生時代から遊びに行った帰りに駅や空港に迎えに来てもらった事は、一度も無かったりするのだ。
荷物を受け取って扉を出ると、あちこちで感激の再会が行われている。
それをなるべく見ないようにして縫うように歩く。
高松駅行きの連絡バスに乗るためだ。
バスに乗ると、私以外にお客が居ない。
運転手さんは「乗って待っててねえ」と言って、バスに私一人残してどこかへ行ってしまった。
小銭が無いので両替をして待っていたが、誰も乗ってくる気配が無い。
寂しいよう。…と思ったら赤ちゃんを連れた若夫婦が乗ってきた。
結局バスに乗ったのは私とその御夫婦だけ。
ガラガラのバスが高松の街を走っていく。
東京とは違って暗い車窓を眺めていたら、たった二日間留守にしただけなのに懐かしさがこみ上げて来た。
久しぶりに会った友達と握手をしたいような、そんな気分だった。
駅に着いた。
お金を払って降りる。
…いいね、見慣れた風景。目をつぶっても歩けそうな。
1分でも1秒でも早く家に帰ろうと思った私は、気合いを入れて重い荷物を持ち直し、初めに自転車を停めた地下の駐輪場を目指して歩き始めたのであった。
…これでやっと終わりです(笑)
ここまで8回分、読んで下さった方ありがとうございました。
あなたの根性に感謝します。
手には人形焼の袋をぶら提げて。
地下鉄に乗りながら私は気が重かった。
再びあの重い荷物を担いで家まで帰らねばならないという事実が待っているからである。
上野駅に戻ってきた私は、ロッカーまでの道順を思い出そうとした。が、
…分からん。
確か北へ行く列車案内がロッカー近くにあったような、という記憶から東北地方へ行く列車案内の標識をたどり始める。
歩きつづけるうち、段々と山手線のホームから離れていく。
そして「大丈夫かな」と不安に思った頃、ようやくロッカーを見つけた。
荷物を出して東京駅に向かう。
帰途は羽田から飛行機を使うのだが、一度リムジンバスというものに乗ってみたかったのだ。
で、東京駅に着いて空港行きのバス乗り場を探す。
探す、探す…見当たらない…。
八重洲口のバス乗り場は帰省ラッシュで大混雑していた。
人をかいくぐりながらバス停の表示を一つ一つ確かめる。
…やっぱり無いよう。泣きそうになった。
こういう時は一人ぼっちがこたえる。
バス切符売場に行くと人員整理をしているバス会社の方を見つけた。
ラッキー!と思ったが、他のお客さんの質問に答えている。
それが終わると、間髪入れず次のお客さん。
話し掛けようとしても隙が無い。自分の鈍さを呪った。
やっと体が空いたみたいなので聞いてみる。
「…あの、羽田空港行きのバスはどこでしょうか?」
「道を渡って反対側のヤンマーのビル前から発車になります」
あれだけ苦労した質疑応答はモノの10秒ほどで終了〜。
ははは。何とアッサリしたモンだったか。
発車時刻をまず確かめようとバス停に行く。
時刻表を見てから何か東京駅で食べようと思っていたのだが、発車まで5分しかないことが分かりそのまま車中の人となってしまった。
走っていると東京の街並みが通り過ぎていく。
東京っていう街は色んな顔があって、しかもその顔々の個性が強すぎる気がする。
強いて言えば、たくさん顔がある仏像みたいなものかな?
それぞれの向きによって全く違う顔。優しい顔も、キツイ顔も。
途中、レインボーブリッジを通った。
嬉しい!予定外の道順。(単に私が東京の地理を分かっていないだけ)
遠くに有明(ビッグサイト)が美しい。
またここへ来たいなあと思いつつ、羽田空港へ向かった私であった。
一歩足を踏み入れると、ビビッた>羽田空港。
人がウジャウジャとたむろしている。
椅子は一杯、人が溢れて通路や床に座り込む。
東京駅も凄かったが、羽田のそれは限界を越えているような気すらする。
ここで何か事が起こったら、パニックになるだけでは済まないだろう。
だが建物が案外単純な構造なので、それだけが救いなのかも。
一つだけ空いた椅子を見つけて座る。
実は午後6時の飛行機なのだが、空港に着いたのは午後3時。
早すぎたためなのか疲れが出たのか、そのうち眠ってしまった。
次に起きたらば午後4時。
荷物を預けてお土産を買おうと思っていたことを思い出して慌てて動く。
以前、荷物は全部機内へ持ち込んでいたのだが、チェックがうるさいので(金属のモノサシ等もカバン開けてチェックされるし)エイヤ!と全部預けることにした。
機械でチェックインして荷物を預ける場所に行こうとしたら、クネった大行列に行く手を阻まれる。
てっきり搭乗口へ向かう人の列かと思ったら、何と荷物預かりの列。
おうおう! 皆さん、こんな所からもう行列ですかい!?
並ぶ事10分。ようやく自分の番。
ボストンバックを機械に通し、カウンターに持って行く。
するとカウンターの人が私のカバンを指差して何事か言い出した。
ヤバイ物は入ってないんだけど…(笑)と思ったら「鞄の外ポケットの本が折れてしまいますよ」と言っているのだった。
ありがとう、カウンターのお兄さん。
荷物を預けると急激にお腹が空いてきたので食料を確保する。
…しかし、レストランはどこへ行っても超満員。
しようがないので1階にコンビニがあったことを思い出し、買出しに行く。
買ったはいいが、人だらけで食べる場所が無い。
考えて到着ロビーのリムジンバスの切符売場の前に椅子があったことを思い出し(我ながらよく思い出せるなあと思う)行ってみると案の定ガラガラ。
ラッキー♪ カウンターの人と目が合ったが食っちゃえ。
土産売場で友達への土産と自分の好物のレーズンケーキを買う。
好きなんです、上野風月堂のレーズンケーキ。(^^;)
それと、羽田空港でお土産を買うと店員さんが「行ってらっしゃい!」と送り出してくれるのだ。
それが結構好きだったりする。
しかし空港限定のお菓子って多いなあ。プリンにケーキ…。
「限定」という文字に弱い人多いんだな。
かくいう私もその口だったりするのだが、あまりの人の多さに挫折した。
いよいよ手荷物チェック。
実を言うと私は金属チェックに一度だけ引っ掛かった事がある。
東京タワーへ登った時に頂いた記念のカンバッチ。
鳴ってポケットを調べた時にこれが出てきて超恥ずかしかった。
乗った飛行機は通路を挟んで左右3列ずつの初めて乗るタイプ。
真ん中の人は居たたまれないだろうなあ…と思いながら、私は自列の真ん中の人を待っていた。(通路側の席だったので)
…来た。おじさん。
出張の帰りらしく、荷物もコンパクト。
彼を通すために席を立ったら、恐縮して隣りの席に納まった。
機内誌を読み出したその人は、何かを思いついたらしく、手帳を取り出してもの凄い勢いで書き始めた。
何を書いているのかは分からなかったが、そんなに凄い事が載っていたのかなあ?あの機内誌は。
ふぐの話しか私の記憶には残っていないのだけれど(笑)
ただ漠然と読み流していたのでは、この厳しいご時世に生き残れないのかもしれない。
些細な事でも仕事のアンテナを張って。
…そんな肩肘張って生きていたいとは思わんのだけどな。
離陸してしばらくすると機長から機内アナウンスがあった。
「当機はこの先、揺れる事が予想されます…。(なるべく揺れないように)努力は致しますのでご安心下さい。では良いお年を」
要約すると↑だそうである。
「揺れる」と言っておいて「良いお年を」も何も無いじゃろ!?(笑)
ひええっと私は思ったが、機長の努力の賜物か殆ど揺れは無かった。
関係ないが、私は機内飲物サービスは何杯お代わりしてもいいのだという事を今回初めて知った。
隣りのおじさんが何杯もお代わりしたからである。
喉が渇いてたのか、烏龍茶を何杯も。
オヤジ、良い飲みっぷりだ。
高松空港に到着すると、到着ロビーに行って荷物を探す。
ロビーのガラス扉の向こうでは出迎えの人が人垣を作っていた。
悲しいかな、ここにも私の知ってる顔は無い。
私は、自分が好きでやっている事では親の手を煩わせるような事はすまいと決めている。
だから、学生時代から遊びに行った帰りに駅や空港に迎えに来てもらった事は、一度も無かったりするのだ。
荷物を受け取って扉を出ると、あちこちで感激の再会が行われている。
それをなるべく見ないようにして縫うように歩く。
高松駅行きの連絡バスに乗るためだ。
バスに乗ると、私以外にお客が居ない。
運転手さんは「乗って待っててねえ」と言って、バスに私一人残してどこかへ行ってしまった。
小銭が無いので両替をして待っていたが、誰も乗ってくる気配が無い。
寂しいよう。…と思ったら赤ちゃんを連れた若夫婦が乗ってきた。
結局バスに乗ったのは私とその御夫婦だけ。
ガラガラのバスが高松の街を走っていく。
東京とは違って暗い車窓を眺めていたら、たった二日間留守にしただけなのに懐かしさがこみ上げて来た。
久しぶりに会った友達と握手をしたいような、そんな気分だった。
駅に着いた。
お金を払って降りる。
…いいね、見慣れた風景。目をつぶっても歩けそうな。
1分でも1秒でも早く家に帰ろうと思った私は、気合いを入れて重い荷物を持ち直し、初めに自転車を停めた地下の駐輪場を目指して歩き始めたのであった。
…これでやっと終わりです(笑)
ここまで8回分、読んで下さった方ありがとうございました。
あなたの根性に感謝します。
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