起床午前6時。
何でこんな早く起きなアカンのかと思いつつ、布団を出た。
午前7時43分発 マリンライナー10号。
これが今日一発目に乗る列車である。

今回の旅の目的は、敬愛するオッサン二人組のライブに行くためである。
あまりオッサンオッサンと書くとファンに刺されそうなのだが、
実際オジサンだろう…彼らも四捨五入したら50歳。

でも彼らと同じ速度で自分も歳取ってるという事は忘れていない。
私も四捨五入したら30歳になっちゃったよ(笑…若返ってどうする)
お互い、歳を取るのは早いですね。

今日のライブは午後5時から。
「昼前に高松を出たらイイだろう」と思っていた私だが
チケットを譲ってくれる知人とライブ前に会うことになり
こんな朝早くから駅のホームに立つハメになったのである。

マリンライナーの指定席。(フンパツした)
言っちゃ悪いが、JRで数々指定席はあれどマリンライナーの指定席ほど
乗り心地が良くない列車は無いと思う。

座席は固い、リクライニング出来ない、狭い。
二人がけ座席は隣席との境が無いので、少しふくよかな方が隣に来ると
太腿が密着状態になる。
(あ、私もふくよかです。スマン)

瀬戸大橋を渡る際に見える海の景色がジンとくるのは
胸張って自慢出来るトコロなんだけどなあ。
瀬戸内の光景を見るたび、私はここで生まれ育った事を嬉しく思うのだ。

しかし、指定席と知らずに座っている人が後を絶たない。
車掌さんが検札に来ると、みな指定席と知って慌てて前の車両に移る。

以前は上手く検札をすり抜けて堂々と座ってる奴がいたものだが、
最近は何度も車掌さんが見回りにきて監視の目を光らせている。
そりゃそうだわな。
やっぱり「正直者がバカを見る」のはイカンです。

ちょっとくたびれた車掌さんが通路を行き来するのを眺めているうち
列車は岡山に到着し、私は新幹線へと乗り換えるためにホームへ降りた。

階段を上がり、通路を通る…頭上に行く方向を矢印で掲示してあるが、
岡山駅は「こだま」の絵が通路上にちょこんと書いてあって
それを辿っても行けるようになっている。

頭上の矢印を見ていた私は妙なプレートを見つけた。
「ピーチ出口」
…?

たくさんある出口の一つらしいが、一体どこへ出るのか分からないし、
何よりナウでヤングなネーミングセンスに撃沈されてしまった。
ちなみに岡山といえば「桃太郎」、それで「ピーチ」繋がりらしい。

気を取り直して乗換え。
以前どこかで「岡山駅の改札は愛想悪い」と書いた気がするが
今回めちゃフレンドリーだった。

私としては、「ありがとうございます」または「おはようございます」
だけで充分なのに。
いや、ぶっきらぼうで悪いよりは断然いいに決まってますが。

ありがとう、白い制服のおじさま。
ご親切に発車のホームまで一生懸命に教えて下さって。
そんなに頼りなく見えたのかと、ちょっと自分が情けない。

乗る列車は「のぞみ1号」。
本当はレールスターに乗りたかったのだが、満席だったためこれにした。
正直「1号」というネーミングに引かれたというのもある。
ミーハーな私だった。

乗ってみるとエライ事になった。
列車は、横1列通路を挟んで5人がけである。
「3人掛け」「通路」「2人掛け」…こんな具合。
私は事もあろうに「3人掛け」の窓際という最悪な席だったのだ。

おそらくトイレには立てないだろう…。
先に駅で行った自分にホッとする。

しばらくして隣の2席に人が来た。
男女二人組。
ふーん、と思った途端、右腕に激痛が走った。
女性が鞄を肩から下ろそうとして、私の腕に思いっきりぶつけたのだ。
痛いの何の。

「気をつけて。大きな荷物、その行方」
と内心思わず標語を即興で作ってみたりして、痛みを紛らわせた。

列車が発車すると、隣が話し始める。
…内容にウエッとなった。
二人は医者らしく、話もそれ関連。
手術の話をしているらしいが、聞いてて気持ち悪くなってきた。
聞くまいとしても耳に入る。

この事を、後日友人に話すと
「女医さんは案外デリカシーが無いからね」と返ってきた。
本当なのか。しかし少なくとも私の隣の女医さんはそうだった。

二人の話を聞きながら、奥に缶詰の私は席を立つことも出来ない。
こんなに列車の旅が苦痛だったのは初めてかもしれない。
窓の外を見ようとしても、直射日光が眩しいので日よけ降ろしてるし。

岡山駅で買った水を飲みながら「早く博多駅に着いて欲しい…」
それだけを願っていた。

旅の始まりは最悪だった。(続く)
 
 
 
 

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