最初から何か予感はあった。
出かける直前になっても、今一つ気乗りがしない。
仕事で忙しいから、疲れているからでは無かったように思う。

8月15日。
サンライズ瀬戸に乗るために家を出る。
去年もそうだったのだが、出かける直前に電話が掛かってくる。何でや。

相手は明日、東京で会う予定のTさん。
さっき私がかけて留守電になっていたのを気にしてかけてきたらしい。
しきりに謝っているが、私には時間がない。
「もういいよ」とやんわり言ってもダメ。
仕方が無いので「早く家を出ないと間に合わないの!」と言う。

駅の駐輪場に自転車を放り込み、列車に乗ろうと改札に行く。
改札のオバチャン(JR四国では改札には女性がいることが多い)に
切符を見せると「○番線です。お疲れさまです」と言われる。

???
何で「お疲れさま」何だろう〜?
と思って個室に入って鏡を見たらザンバラ髪、スッピンのオバハンが
そこに映っていた。
そりゃ、これじゃ言われるわな。生活に疲れとるよ、私。

ドアを開けたまま車掌さんの検札を待つ。
…来た!
今回は前回と違って真っ白のサンライズコスチューム(勝手に命名)だ。
やっぱり格好いいです。ステキ、おじさま。

検札がすむと列車は瀬戸大橋を渡る。
私は今回、二階建の一階だったので窓から下を除くと黒い海が見えた。
怖い。しかし夜景とのコントラストが美しい。
ちなみに二階の部屋は橋を見上げることが出来ます。

橋を渡りきると早々に寝てしまった。
いつもならカタログチェックをして遅くまで寝ないというのに。
やっぱり予感はあったのかな…。

しかし今回のサンライズは揺れた。(先頭車両に乗車)
ベッドから何度も落ちそうになった。
夢現で何度も足を踏ん張った記憶がおぼろげに残っている。

午前7時に東京に着くので逆算して5時50分に目覚ましをセットしていた。
…で、目覚ましで目が覚める。
起きた瞬間、何かがおかしいと思った。

列車が揺れていない。止まっている。
慌ててブラインドを上げると土砂降りの雨。
見知らぬ駅。
動く気配のない列車。

午前6時に車掌さんからアナウンスが入る。
「現在、列車は運転を見合わせております。
運行再開の見込みは立っておりません」
…もっと早く言ってよ―――!!!
(早朝は放送を自粛していたらしい。当然か)

テレビで何度も見た状況。
いつもは家で呑気げに「へえ、大変だね。この人たち」と言ってたが、
今まさに自分がその渦中にいる。
夢じゃねえぞ、これは。と思う一人旅の途中。

何をしていいか分からなかったので、
とりあえず待ち合わせしている人間に「遅れる」メールを打つ。
状況を逐次送信する事で落ち着く。

次に車掌さんからの状況説明を待つ。
しかし上記の言葉を繰り返すだけで、進展がない。
「今、どこの駅にいるのか」ぐらいは言って欲しい。

更に待つと
「三島まで普通列車、三島から新幹線で振替運転することが決定した」と。
だーかーら、ここはどこの駅なんですか??
ちなみに駅名が分かったのは普通列車に乗って路線図を見たときであった。
静岡県の「富士」駅だった。

この段階で午前6時30分。
「振替運転を希望される方は7時7分までに向かい側ホームに
集まって下さい」と言われる。
よっしゃ!と時計とにらめっこをしながら、洗面台で顔を洗う。
部屋に戻って用意してあった朝御飯を食べる。
服装はGパンと長袖Tシャツ。足はスニーカー。

前夜はぐっすりと寝た。御飯も食べた。
服装だってラフで動きやすい。
これで私はこれから先、何があっても大丈夫なんじゃないかと思った。

ホームに行くと超満員でみんなグッタリしている。
無理もない。
親に連れられた子どもたちが誰一人泣き喚かなかったのが不思議だった。

ホームに列車が来る。乗る。
私のように元気のある人間は一番座るべきではないだろう。
立って吊革につかまった。荷物は網棚に乗せた。
電車は走り出したが、遅い。
駅で長時間止まったりもしてヤキモキする。
結局、その電車は熱海行きだったのが三島で運転を打ち切った。

三島でこだまに乗り換えねばならない。
新幹線の改札に行くと振替運転の連絡表を貰うのだが、
配っているのがたった駅員さん二人。
大勢が押しかけるのだからあっという間に手持ちの連絡表が無くなる。

手ぶらになった若い駅員さんは乗客に押しかけられ、
パニックになって中年の駅員さんから紙をひったくっていた。
気持ちは分かるが、落ち着け。
皆殺気立っているのに、駅員さんまで雰囲気に飲み込まれてどうするよ?

新幹線のホームに上がると自由席の列に並びに行く。
列車が入ってくるとすでに帰省客で超満員。
通路で立つ場所を確保するだけで精一杯だった。

私はゴミ箱の近所に場所を確保できたので、手すりに鞄を引っ掛ける。
私の様子を見ていたお姉さんが向かいの手すりで同じように
やろうとしているのだが、上手くいかないらしい。
そこで「こうやって引っ掛けるんだよ」と無言で示してみる。

それにしてもまだ東京に着かない〜。
ギュウギュウ詰で息苦しい。
コラ、JR!!私らは牛や馬じゃないぞう。

待ち合わせの相手とは、メールで連絡を取り合っていたのでその点は助かった。
昔だったら待ちぼうけを食らわしているところだ。

やっと東京に着いたら午前9時を回っていた。
大井町で待合せをしているために京浜東北線に乗る…が、
乗ったことが無いのでホームが分からない。

山手線の近くだろうとアタリをつけて探す。
あった。乗る。もうここら辺は疲れて本能で動いていたような気がする。
…サンライズを乗り捨てて約3時間。やっと座れた。ヨカッタ。

大井町に着くとりんかい線を探す。
これはすぐに見つかった。
ボーっとしていたら待ち合わせの相手が駆け寄ってきた。
ああ、やっと会えたね。
こんなに見知った人の顔が愛しく見えたのは初めてだった。
 
 
次は有明ビッグサイト編です。
(イヤンな方はすっ飛ばして下され) 
 
 
 

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