会社帰りに駅まで歩いていた
前をおやじが歩いていたが、「歩くの速いな」と思っただけで
特に気にせず追い抜いた
次第に私の後ろの足音と気配は遠ざかっていった

駅に着き、改札を通ってホームで電車を待っていたら
やたらデカイ声が聞こえた
「何だ、電車まだか。急いで歩くことないじゃん。
バタバタ歩くことねえんだよ、バカみたいに」

バカとは私のことを言ってるのだとわかったので
改札を通ってきたおやじに、満面の笑みでニヤリと笑ってやった
確か「バカみたいに」と言ってる時だったと思う
ホームに上がるには階段を上がって私の前を通るか
ホーム後ろの壁沿いの薄暗いスロープを通らねばならない
おやじは私の背後をゆっくりと歩いていった

目が合った時、一瞬だけバツが悪そうな顔してたな
まさか改札抜けてすぐそこに私が居るとは思わなかったんだろ
小娘に負けたのがよっっっぽど悔しかったんですね、わかります

どんなに言葉を荒げても、悪態ついても、悔しくてわめき散らしても
結局あんた負けたんだよ、そのバカに
私がバカなら、負けたあんたはバカ×1000ぐらい
いい年して感情を往来で剥き出しにすんな、みっともない
 
 

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